ホリ乳業(金沢市)の堀初治社長は4日、直営のホリ牧場(石川県内灘町、搾乳牛頭数200頭超)で3日朝に搾乳した生乳の水分量が少なく、工場で受け入れられなかったことを明らかにした。1日夕の地震発生後、現地では断水状態が続いており、乳牛に十分な飲み水を供給できていないためとみられる。「自社のミルクローリーで牧場に水を運んでいるが、間に合わない。このままでは牛がダメになってしまう」と一刻も早い給水支援を求めている。

 ホリ牧場では震災直後から断水に見舞われた。パイプラインを洗浄できない上、搾乳したら牛が脱水症状を起こす恐れもあることから、当初は対応に苦慮していたが、搾乳しないわけにもいかず、3日朝にバケットで200頭超を5時間以上かけて搾乳した。工場からも二人が手伝いに向かったという。

 ところが、その生乳は脂肪分と無視乳固形分が異常に高く、工場で受け入れられなかった。堀社長は「牛たちが十分な量の水を飲めていないため、生乳中の水分量が少なかったのではないか。加水するわけにもいかず、廃棄せざるを得なかった」と声を落とす。

 同社は断水を受け、自社の小型ローリーで1日1回、牧場に水を運んでいるが、到底間に合わないという。「このままでは牛がエサを食べなくなり、やせてしまう。牛は一度体調が崩れると、なかなか元に戻らない。被災地ではうち以外にも断水に直面している牧場は少なくない。北海道のブラックアウト(2018年の北海道胆振東部地震)のときのように、ローリーに水を積んで給水してほしい」と訴える。

 一方、工場では一部設備で被害が確認されたものの、操業に支障はなく、震災後も生乳を受け入れ、牛乳やヨーグルトを製造している。能登半島を除き、物流面にも問題はなく、隣県や関東・東海・関西方面に商品を配送できている。原料乳の確保状況については、道路状態の問題で、2日は系統外(自主流通)の生乳が届かなかったが、需給がダブついていたため、現時点では不足していない。9日から再開される学校給食牛乳は、道外移出生乳へのオーダーも行っており、通常通り供給できる見通しだ。