台風10号の影響で、西日本を中心に各地で大雨や突風が相次いだ。関東以西では、土砂崩れによる道路の通行止めや停電の影響で生乳廃棄が発生したほか、集送乳の遅れにも見舞われた。指定団体や乳業関係者は配乳変更など懸命の対応を続け、被害を最小限に抑えた。
今回の台風は、8月28日に奄美諸島を北上した後、29日午前に鹿児島県に上陸、1日半かけて九州を横断後、31日は四国を横切り、その後は温帯低気圧に変わった。迷走を続ける間、西日本を中心に各地に強い雨を降らせた。
台風の上陸地点となった九州では、一部地域の牧場で停電が続き、バルククーラーの冷却機能が喪失したことで生乳廃棄が発生した。強風で牛舎の屋根が破損する被害も報告された。九州生乳販連は「各地域の被害の詳細な状況については現在精査中」としている。
四国も台風が横断したものの、四国生乳販連は「集送乳などに支障があった旨の報告は受けていない。当初の予想より雨の勢いが弱かったのも幸いしたのではないか」と話す。中国生乳販連も「8月31日には一部の小中学校が臨時休校の措置を講じたが、大きな混乱は生じていない。雨そのものが少なく、生乳廃棄が発生する事態にも至っていない」と説明する。
関西でも幅広いエリアで大雨が断続的に降り続く中、近畿生乳販連によると、一部で停電の発生や生乳集荷に遅れが出たものの現在は回復。畜舎の倒壊や浸水、牧草地の冠水などは報告されていないという。
東海では大幅な集送乳作業の遅れが発生。東海酪連は「台風の進路が遅く予測も難しい中、想定される影響について事前に対策を講じた。愛知県内のクーラーステーションは、停電に備え蓄電池を準備した。広域ルートの配乳や、管内の各乳業工場への生乳輸送について、大雨による集送乳の遅れなどの影響を抑えるため、できるだけ近距離で配乳するよう配車変更を行った」と振り返る。
関東では、神奈川県で発生した土砂崩れの影響で集送乳が遅れたものの、現在は回復している。関東生乳販連は「台風の接近に備え、北海道からのフェリーの欠航なども想定し、全農や管内酪農協などと対応を事前協議した。集送乳ルートを確認し道路寸断などの懸念がある遠方への送乳は、近隣からの送乳に変更するなどの対応を行った。台風のスピードが遅く、進路も変則的で予測は難しかったが、早めの判断で大きな被害には至らなかった」と胸をなでおろしている。