

農水省の食料・農業・農村政策審議会畜産部会は3月28日、新たな酪肉近代化基本方針(酪肉近)を農水大臣に答申した。この日の部会は書面での開催(持ち回り審議)となり、全19委員が方針案に賛成した。同省によると、委員から寄せられた意見の概要は次の通り。
(1)「酪肉近」及び「改良増殖目標」について
▽安定的に飲用牛乳等を提供し続けるためにも、地方行政と連携して、新規就農者の確保対策や国産飼料生産の拡大対策等を充実・強化し、都府県における酪農生産基盤の維持・強化も図っていく必要。
▽わが国酪農の最大の課題は、乳脂肪分需要に対して無脂乳固形分需要が極端に少ないことであり、ヨーグルトなどの需要拡大対策と、需要のあるチーズの競争力強化対策等により、基本方針の目標に向けて安心して生産できる環境を作ることが重要。
▽今後、新たな生産数量目標に向けて、安定的に生産の維持・拡大を図っていくためには、酪農・乳業が一体となって生産・流通コストの削減に取り組むとともに、需要拡大を図っていくことも必要。このため、乳業としても、新商品の開発等に努めて参る所存。
▽肉用牛について、繁殖雌牛を更新していく際には、今後は肉質だけでなく繁殖性にも着目すべき。
▽酪肉近、改良増殖目標、いずれも生産対策の色が濃いが、健全で、円滑な食肉の流通を維持・発展させることも重要な生産・消費対策であることを認識して、今後の政策・施策に反映する必要。
▽当方針に沿った革新的な施策が今後展開されることを期待。
▽今回の酪肉近等の内容が前向きなメッセージとして受け止められるよう、生産現場への十分かつ丁寧な説明が必要。
▽諸課題を国頼みとするのではなく、自らの経営責任という強い自覚と意志を持ち、経営力を磨いていくことが重要。
▽経営力向上の文脈では、「生産者」「所得」などの用語に違和感があり、用語・言葉の検討が必要。
▽5年後目標を着実に達成し、長期的な姿を目指していくためにも、目標・KPIにかかる検証・進捗管理等を通じ、需要拡大や生産基盤の維持・強化、経営安定の確保等に向けた施策について、その実効性の確保に努めていただきたい。
▽酪肉近をベースとしたPDCA、フォローアップについて、基本計画のそれと平仄(ひょうそく)を合わせつつも、酪農・畜産の特性に応じたあり方を検討していく必要。その際、過度に目標の達成状況の評価にとらわれず、施策の進捗や効果を確認するためのフォローと分析をしっかり行うことが重要。
▽定量的なフォローアップとともに、「国産飼料基盤に立脚した生産への転換」に向けた各地域の取組みの共有や整理など、定性情報の収集や課題整理なども合わせて検討すべき。
▽基本方針は需要拡大を前提とした建付けとなっているが、酪農・畜産の近代化が進展し、今後人口減少に伴う需要減少や社会構造の変化が確実であるなかで、その名称や定める事項についても、今後見直すべき。
(2)「家畜排せつ物の利用の促進を図るための基本方針」及び「養豚農業の振興を図るための基本方針」について(報告事項)
▽改正基本法のもとで、「食料安全保障の確保」と「環境との調和」の両立が重要になり、酪農・畜産分野においても、生産振興と畜産環境対策の両立、飼料生産、酪農・畜産物生産、排せつ物の地域循環の確立が一層重要となる。今後、各地域で計画等を作成する際にも、関係する方針間のつながりをより強く意識していくことが必要。